雨の日、レインコートを着せようとしただけで嫌がる。袖を通す前から泣く、着てもすぐ脱ぐ、服が濡れると絶叫する。登園前から親子でぐったりしてしまいますよね。
レインコートを嫌がる理由は、わがままだけではないことがあります。シャカシャカする音、肌に当たる感覚、蒸れ、視界の狭さなどが、その子にとって強い不快感になっている場合があるんです。
この記事では、レインコートを嫌がる子が少しずつ慣れる5ステップを紹介します。無理に着せる前に、感覚のつらさを小さくしていきましょう。
はじめまして、岡田あやのです。元小学校の特別支援学級の教員を10年やってきました。専門的な支援方法も、それなりに知っているつもりでした。でも我が子(現在8歳・グレーゾーン)が雨具を着るのを全力で拒否したとき、学校でのスキルがまったく通用しなくて、玄関で何度も立ち尽くしました。今日は、そのとき試してうまくいったことを順番にお伝えしますね。
レインコートを嫌がるのは「わがまま」ではないことがある

まず知っておいてほしいのは、レインコートを嫌がる行動の裏には理由が隠れていることが多いということです。
「ただのわがまま」「甘え」と片づけてしまうと、対応を間違えてしまったりするんです。理由が分かれば、ぐっと向き合いやすくなります。
感覚のつらさが原因になっていることがある
発達がゆっくりな子や感覚が敏感な子は、大人が「これくらい平気でしょ」と感じる刺激を、強い不快として受け取ることがあります。
レインコートには、その子を困らせる刺激がいくつも詰まっていたりします。
たとえば、こんな感覚です。
・シャカシャカという音が耳にうるさい
・ビニールやナイロンが肌に当たる感触がイヤ
・中が蒸れて汗ばむのが不快
・フードで視界が狭くなって怖い
・腕が動かしにくくて窮屈
大人にとってはささいなことでも、子どもにとっては「全身を不快なものに包まれる」くらいの体験だったりします。絶叫するほど嫌がるのは、それだけつらいというサインなんですね。我が家の娘も、当時は「気持ち悪い、気持ち悪い」と泣きながら脱いでいました。
「嫌がる=困っている」と読み替えるだけで、声かけが優しくなります。理由を探る姿勢が、慣れへの第一歩です。
無理強いが逆効果になる理由
嫌がる子に「いいから着なさい」と無理に着せると、その場はなんとかなっても、次の雨の日がもっと大変になることがあります。
不快な体験と「レインコート」がセットで記憶に残ってしまい、見ただけで拒否反応が出るようになっちゃうんです。これは脳の自然な働きなので、子どもが悪いわけではありません。
同じように癇癪が強く出てしまう場面については、グレーゾーンの子の癇癪対処法5つでも家庭でできる落ち着かせ方をまとめています。あわせて読んでみてくださいね。
大事なのは、急がず、不快感そのものを小さくしていくこと。そのための具体的な手順を、ここから5つのステップで見ていきましょう。
レインコートに慣れる5ステップ その1・2 まずは「触れる」から

いきなり着せようとしないこと。これが、レインコートを嫌がる子への関わりで一番大切なところです。
ステップは、ハードルの低い順に進めます。今日できるところからで大丈夫ですよ。
ステップ1 雨の日以外に部屋で見せる・触らせる
最初のステップは、雨が降っていない日に、家の中でレインコートと仲良くなることです。
雨の日の朝は、時間もないし、親も焦っていて空気がピリピリしますよね。その状態で初対面させると、悪い印象がつきやすいんです。
だから、まずは晴れた日のリラックスした時間に出してみます。
・床に広げて一緒にながめる
・「これ、なんの色かな?」と声をかける
・お気に入りのぬいぐるみに着せてみる
・子どもが触りたがったら、その手の動きを見守る
ここでのゴールは「着る」ことではありません。怖くない、敵じゃないと感じてもらうこと。それだけで十分な前進です。
初めて見せたその場で「ほら着てみよう」と腕を通させる。子どもは「見せられた=着せられる」と警戒して、次から逃げるようになります。
「今日は見るだけね」と最初に伝える。子どもが安心して近づける。触れたら「さわれたね」とだけ言って終わる。
ステップ2 短時間だけ羽織ってみる
レインコートに慣れてきたら、次はほんの数秒だけ羽織ってみるステップです。
ここでも、フードはかぶらない、ボタンは留めない、で大丈夫。肩にふわっとかける程度から始めます。
「3秒だけ」「鏡の前で1回ポーズ」など、終わりが見えるかたちにするのがコツです。終わりが分かると、子どもは安心して挑戦しやすくなったりするんです。
うまくいったら、すぐ脱がせてあげてください。「もう少し」と欲張ると、せっかくの成功体験が崩れちゃいます。短く、成功で終わる。これを何回か繰り返すだけで、体が少しずつ慣れていきます。
切り替えがゆっくりな子の場合は、グレーゾーンの子の切り替えが苦手な時の対処法5つの声かけも組み合わせると、脱ぎ着の場面がスムーズになりますよ。
レインコートに慣れる5ステップ その3・4 感覚慣らしと環境調整

ここからは、感覚慣らしと環境の工夫で、不快感そのものを減らしていきます。レインコートを嫌がる気持ちの「中身」に手を入れていくイメージです。
ステップ3 音・感触の感覚慣らしをする
レインコートを嫌がる大きな理由が、音と感触です。ここは、遊びの中で少しずつ感覚慣らしをしていくのが効きます。
たとえば、こんな小さな練習です。
・レインコートの生地を手でくしゃくしゃして音を聞く遊び
・「シャカシャカマンだ!」と音を楽しいものに変える
・腕にちょっとだけ生地を当てて「ひんやりするね」と実況する
・好きな音楽をかけながら羽織って、音を気にしにくくする
不快な刺激も、自分で予測できる・遊びの一部になると、感じ方がやわらいでいくことがあります。「いつ来るか分からない刺激」が一番つらいので、子ども自身がコントロールできる形にしてあげるのがポイントです。
感覚過敏は、その子の特性です。「鍛えて治す」ものではなく、「不快を小さくして付き合えるようにする」もの。慣らしは、無理のない範囲でゆっくりが鉄則です。
ステップ4 素材・サイズ・形を見直す
どうしても慣れないときは、レインコート側を変えてしまうのも立派な解決策です。子どもを変えるより、道具を変えるほうが早いこともあるんですね。
見直すポイントはこのあたりです。
・素材:シャカシャカ音が少ない、やわらかいタイプを選ぶ
・サイズ:ワンサイズ大きめで窮屈さを減らす
・形:かぶるポンチョ型より、前開きで着脱がラクなもの
・フード:視界が怖い子には、つば付き帽子+小さめフードに
・裏地:肌当たりがやさしい起毛・メッシュ素材を選ぶ
「うちの子はこのタイプなら着られた」というのは本当によくある話です。我が家も、ポンチョ型を前開きのレインコートに替えただけで、絶叫が半分になりました。合わない道具で頑張らせていただけ、ということもあるんです。
レインコートが無理でも、撥水のウインドブレーカー+長靴+傘で代用できる日もあります。「レインコート一択」と思い込まないことも大切です。
レインコートに慣れる5ステップ その5 登園前の声かけと見通し

最後のステップは、雨の日の朝そのものを乗り切る工夫です。どんなに練習しても、本番の朝はバタバタしますよね。ここを整えると、ぐっとラクになります。
ステップ5 着る前に見通しを伝える
嫌がる子ほど、これから何が起きるか分からない不安を抱えています。だから、着る前に見通しを言葉や絵で伝えてあげると、心の準備ができるんです。
たとえば、こんな声かけです。
・「雨だから、玄関でレインコート着てから行こうね」
・「シャカシャカ着たら、長靴はいて、出発だよ」
・「3つ数えたら、腕とおすよ。いち、にの、さん」
・「保育園に着いたら、すぐ脱げるからね」
「すぐ脱げる」という出口を先に示してあげると、子どもは安心して袖を通せたりします。終わりが見えると、不快も我慢しやすくなるんですね。
朝の声かけ全般については、グレーゾーンの子への声かけ5つのコツもぜひ参考にしてみてください。
できた日は小さく一緒に喜ぶ
そして、レインコートが着られた日は、どんなに小さくても一緒に喜んでください。
「着られたね」「かっこいいね」「がんばったね」。できた体験を、いい記憶として上書きしていくことが、次への自信になります。
ここで大事なのは、できなかった日を責めないこと。雨の日にレインコートを着られなかったとしても、それはふりだしに戻ったわけではありません。昨日触れたこと、一昨日羽織れたことは、ちゃんと積み上がっています。
発達がゆっくりな子の歩みは、まっすぐ右肩上がりではなくて、行ったり来たりしながら進みます。長い目で見れば、確実に前に進んでいるんです。発達外来や療育の順番を待っている方は、療育が1年待ちのとき待機中に家でできる5つのことも、今日からの関わりの参考になりますよ。
特別支援の教員だった私でも、我が子の雨具一つに何ヶ月もかかりました。だから、今うまくいかなくても、あなたが悪いわけでも、お子さんがおかしいわけでもありません。この子に合うやり方が、まだ見つかっていないだけなんです。一緒に、少しずつ探していきましょうね。
まとめ レインコートを嫌がる子と少しずつ進むために

レインコートを嫌がるのは、わがままではなく、感覚のつらさが隠れていることがあります。無理強いせず、不快を小さくしながら、5つのステップで少しずつ慣らしていきましょう。
- 雨の日以外に部屋で見せる・触らせる(怖くないと感じてもらう)
- 短時間だけ羽織ってみる(成功で終わる体験を作る)
- 音・感触の感覚慣らしを遊びでする(自分で予測できる刺激に)
- 素材・サイズ・形を見直す(道具のほうを変える)
- 登園前に見通しを伝える(出口を先に示して安心させる)
どのステップも、できた日は小さく一緒に喜んで、できなかった日は責めない。これだけで、雨の日の玄関の空気が少しずつ変わっていきます。
この子の特性は、すぐには変わりません。でも、環境と声かけは今日から変えられます。雨の日が、親子で少しでもおだやかな朝になりますように。あなたとお子さんのそばで、ずっと応援しています。
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